人的資本可視化指針(改訂版)2026年
発行: 内閣官房・金融庁・経済産業省
公表日: 令和8年3月23日(2026-03-23)
位置付け: 2022年8月版の全面改訂。経営戦略と人材戦略の連動の具体化と国際基準整合が主眼。
改訂の背景と趣旨
主な改訂理由
| 背景 | 内容 |
|---|---|
| 府令改正(2026-02-20施行) | 「企業内容等の開示に関する内閣府令」改正。2026年3月期から「企業戦略と関連付けた人材戦略・従業員給与等の決定方針」の開示が義務化 |
| 国際基準の進展 | ISSB(IFRS S1/S2)が2023年6月公表。国際基準を踏まえた開示の考え方を整理 |
| 投資家からの指摘 | 旧指針では「経営戦略と人材戦略の連動の重要性」を指摘するにとどまり、具体的方法が不足との声 |
人的資本開示の4要素フレームワーク(国際基準準拠)
国際基準(IFRS S1・TCFD等)に共通する4つの要素を人的資本開示に適用:
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ガバナンス | 人材戦略・人的資本投資に対する取締役会の監督体制 |
| 戦略 | 経営戦略と連動した人材戦略(あるべき組織・人材の姿と人的資本投資) |
| リスク管理 | 人的資本関連のリスク・機会の特定・評価プロセス |
| 指標及び目標 | 人材戦略の進捗を測定する指標・目標(独自性と比較可能性のバランス) |
経営戦略と人材戦略の連動モデル
2ステップの論理展開(IFRS S1準拠)
経営戦略
↓【依存・影響】
人的資本(あるべき組織・人材の姿)
↓
人的資本関連の「リスク」「機会」の特定
↓
人材戦略・人的資本投資の策定
↓
開示(4要素フレームワーク)
①人的資本への依存・影響
- 経営戦略の実現は「あるべき組織・人材の姿」を確保できるかに「依存」する
- 企業は採用・育成・職場環境整備等を通じて人的資本に「影響」を与える(相互関係)
②人的資本関連のリスク・機会
- この相互関係を明らかにすることで、企業のキャッシュフロー等に重要な影響を与える可能性のある人的資本関連リスク・機会を整理できる
- 事業セグメント・地域ごとに重要なリスク・機会を特定する
人材戦略策定の3ステップ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①あるべき組織・人材の姿を策定 | 経営戦略における重要度の高い項目(事業拡大・収益性向上等)において、どのようなスキル・能力を持つ人材がどの程度求められるかを明確化(人材ポートフォリオ構築) |
| ②必要な人材戦略・人的資本投資を整理 | あるべき姿と現在の姿のギャップを埋めるためのアクション・人事施策を検討 |
| ③優先順位・時間軸を設定 | 各アクションの経営への影響度・リスク・機会を分析し、経営戦略と整合的な時間軸で優先順位付け |
可視化・開示の3ポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| Point 1: 指標及び目標の設定 | 独自性のある指標(経営戦略固有の進捗)と比較可能性の高い指標をバランスよく設定。事業セグメント・地域ごとの管理も有効 |
| Point 2: 可視化とモニタリング | 設定指標に基づき人的資本の現状を可視化。進捗モニタリングにHRテックやAIを活用することも重要 |
| Point 3: 情報開示 | 財務・人事の両面から一貫したストーリーとして論理的に説明。望ましくない数字でも原因と対応策とともに開示が有効 |
投資家が幅広く期待する4指標
グローバル投資家へのヒアリングから、以下の指標への開示が多くの企業に期待される:
- 従業員数
- 人件費(労務費総額)
- 離職率
- 従業員エンゲージメントスコア
質の高い人的資本投資の重点課題
①重要スキルを持つ人材の確保・育成に向けた投資(賃金等)
②ジョブ・スキルに基づく処遇制度の導入(ジョブ型人事)
③従業員の健康維持増進・働きがいのある職場づくり(健康経営)
④女性活躍の推進
⑤ダイバーシティ経営の推進
付録構成
| 付録 | 内容 |
|---|---|
| 別紙 | 「戦略に焦点をあてた人的資本開示〜投資家の期待に応えるための考え方の整理〜」(4要素の詳細) |
| 付録① | 経営戦略と人材戦略の連動及びそれを踏まえた指標の開示事例(10社)→ 人的資本開示_企業事例集_2026 |
| 付録② | 人的資本に関する開示基準・開示事項例の整理 |
| 付録③ | 参考資料集 |