なんでもCopilot: Copilot CoWork — AIエージェントを業務プロセスに組み込む設計論

まつにぃ(株式会社エクスプラザ AIリードプロデューサー)が2026年5月20日に公開した SpeakerDeck スライド資料「Design Note」シリーズ。Copilot CoWork / Copilot Studio を「便利な補助ツール」から「業務プロセスの一部」へ移すための設計論を24スライドにわたって体系化している。

全体構成(6セクション)

セクションテーマ
1. AI Agents at WorkAIエージェントが実務に入る感覚・実際に処理できる6業務
2. Copilot CoWork / Studio製品概要・ビルトインスキル・実行フロー・Custom Skills
3. Workflow Design業務設計の本質・タスク分解・スキル設計7要素
4. Information State社内情報の確定/未確定分類・メタデータ管理
5. Tool Routing4ツールの使い分け基準
6. Operations評価・ログ・コスト管理・Hooks の活用

セクション1: AIエージェントの実務

AIが処理できる業務領域として以下の6つが挙げられている:

  1. メールを確認する
  2. Slackから依頼事項を抽出する
  3. 議事録からタスクを整理する
  4. 商談前に関連資料を集める
  5. 提案資料の初稿を作る
  6. 日程調整の下書きを作る

著者自身は Notion AI のカスタムエージェントで4段のエージェント処理パイプラインを運用中:

01 抽出 → 02 Inbox → 03 分類 → 04 実行
  • 抽出: メール/Slack/社内ドキュメント/PMツールから担当依頼を抽出
  • Inbox: 即時実行 / 前提整理 / 関係者調整に振り分け
  • 分類: 実行可能なものはタスクリストへ。調整要はタグ付きバックログへ
  • 実行: 下書き作成・日程候補・仮予定登録・Slack通知まで進める

セクション2: Copilot CoWork / Studio

Copilot CoWork の概要

「答える Copilot」から「実行する Copilot」へ

項目内容
リリース2026年3月 Wave 3 発表。Frontier preview で先行提供
モデルClaude 4.6 / Opus 4.7(Anthropicとの提携)。Auto Mode も選択可
範囲M365全体(Outlook / Teams / Word / Excel / PPT / SharePoint)を横断
振る舞いPlan → 実行 → 承認。outcome を伝えると plan を立て、checkpoint で確認を取る

13個のビルトインスキル

Word / Excel / PowerPoint / PDF / Email / Scheduling / Calendar Management / Meetings / Daily Briefing / Enterprise Search / Communications / Deep Research / Adaptive Cards

各スキルは「依頼を理解 → 必要データ収集 → 出力作成」の1ドメイン完結ワークフロー。会話中にアクティブなスキルがサイドパネルに表示される。

実行フロー(HITL設計)

01 伝える(自然言語で outcome)
→ 02 計画(Work IQ で M365 信号を集約 → plan化)
→ 03 実行(必要スキルをロードしてバックグラウンド実行)
→ 04 確認(リスクレベル付きで承認を求める)
→ 05 完了

不可逆な操作(メール送信・Teams投稿など)の手前で必ず停止し、リスクレベルを提示して承認を求める。

Custom Skills の設計

組織・チーム・個人の標準やプロセスを自然言語(md形式)で記述し、参照アセット(OneDrive/SharePoint上のファイル)に紐付けてカスタムスキルを定義できる。

作成手順

  1. 目的を書く(いつ起動し、何を返すか)
  2. 手順を自然言語で記述する
  3. 参照する資料・テンプレートを紐づける
  4. 承認が必要なアクションを指定する
  5. テスト → 公開(個人 / チーム / 組織)

紐づけるアセット:テンプレート(Word/PPT/Excel)/ 文書(業務手順書・FAQ)/ データ(SharePoint/OneDrive)/ ルール(承認条件・トーン・出力フォーマット)

スキルの作り方(鉄板パターン)

まず一緒にやって、Skillにする

  1. 並走する — 自分が手を動かしながら、エージェントに横でやらせる
  2. 型を抜き出す — 会話履歴を素材に「何を見て / どう判断したか」を言語化
  3. Skillに固定 — 「じゃあこれをSkillにして」で型を固定

スキルによるAIオンボーディング

Skillを実際の業務プロセスに紐づければ、新メンバーの研修と同じ感覚でAIが組織に組み込まれていく。

推奨フォルダ構成(OneDrive / SharePoint)

/AI-Operations/
├─ Skills/
│  ├─ SalesPrep/        ← 商談準備
│  ├─ MailDraft/        ← 返信下書き
│  └─ WeeklyReport/     ← 週次レポート
├─ Templates/           ← Word / PPT / Excel
├─ References/          ← 確定 / 未確定 を分離
├─ Outputs/             ← Inbox / Task / Backlog
└─ Logs/                ← 実行ログ・修正履歴

各スキル直下に skill.md / templates/ / references/ / examples/ を配置。


セクション3: 業務設計の本質

本当の難しさ

AIの性能そのものではない。難しいのは、業務をAIが処理できる単位に分解し、参照すべき情報・判断基準・確認条件・評価方法を設計すること。

タスク分解(6処理分解)

「タスク整理」という大きな指示を以下の6処理に分解する:

#処理内容
01抽出メール・Slackから担当者明示の依頼事項を抽出
02分類返信必要 / 期限あり / 確認のみ等に分類
03登録Inboxに登録、即時実行 vs 前提整理に分岐
04判定別エージェントがタスクリストを確認・実行条件確認
05下書きGmailの下書き・カレンダー候補日時・仮予定登録
06通知処理完了後 Slack / Notion に確認依頼を通知

スキルが明文化する7つの判断

  1. 参照 — どの情報を参照するのか
  2. 信頼 — どの情報を信頼してよいのか
  3. 仮説 — どの情報は仮説として扱うのか
  4. 自動 — どの条件なら自動処理してよいのか
  5. 確認 — どの条件なら人間の確認が必要か
  6. 成果 — どの形式で成果物を作成するのか
  7. 評価 — 作成後に何を基準に評価するか

セクション4: 情報の状態管理

確定情報 vs 未確定情報

種別扱い
確定情報売上実績・契約情報・請求金額・納期・担当者名事実として参照してよい
未確定情報営業所感・顧客の温度感・検討中の提案・未承認施策案仮説として扱うべき

メタデータが無いと、AIは古い情報や未承認情報を根拠にしてしまう。

ドキュメントメタデータの8要素

状態 / 時点 / 作成者 / 承認者 / プロジェクト / 使用工程 / 公開範囲 / 有効期限


セクション5: ツールの使い分け

ツール使いどころ
Copilot CoWork業務フロー未確定。自然言語で試行・検証する段階
Copilot Studio処理手順が見えてきた業務をフローとして設計
Power Automate条件分岐・通知・登録など実行内容が固定された処理
Script / Rule形式チェック・数値検証など判定基準が明確な処理

判断基準5ルール

  1. 未確定 + 自然言語 → Copilot CoWork
  2. 手順可視化 → Copilot Studio で設計
  3. 固定実行 → Power Automate
  4. 明確な判定 → スクリプト
  5. 自然言語判断(文脈理解・情報統合・初稿作成) → Copilot CoWork

セクション6: 運用と改善

評価の6観点

  1. 正しい情報を根拠にしているか
  2. 古い / 未承認の情報を参照していないか
  3. 担当者と期限を正しく抽出できているか
  4. 承認が必要な処理を自動実行していないか
  5. そのまま確認できる品質になっているか
  6. コストが削減時間や成果に見合うか

ログの7項目

いつ実行されたか / どのスキルが使われたか / どのファイルを参照したか / どのモデルを使ったか / コスト / 人間がどの箇所を修正したか / エラー内容

コスト最適化

  • 毎回同じ修正 → 参照や出力形式を見直す
  • 分類誤り → 分類ルール・タグ設計を修正
  • 高コスト工程 → 軽量モデルへ置換
  • 回帰 → ログから原因工程を特定

処理ごとに必要なモデル性能を階層化:判断/文章生成 → 上位モデル、定型処理/形式チェック → 軽量モデル

Hooks の活用

Claude Code Hooks に着想を得た自動検証パターン:

  • AI処理完了をトリガーに、ログ記録・形式チェック・追加検証を自動実行
  • プロンプト挿入時Hook例:「該当するSkillがある場合は、それで実行してね」を毎回自動挿入 → Skillsの実行率が向上

PowerPoint生成時の5チェック例

  1. 文字のはみ出し
  2. 必須項目の欠落
  3. 画像の配置
  4. スライド枚数
  5. フォーマット一致

核心メッセージ

AI導入ではなく、業務設計が成果を決める

  • 業務を、AIが処理できる単位に分解する
  • 社内情報の状態を、メタデータで管理する
  • スキルを設計し、判断基準を明文化する
  • 評価とログで、改善できる仕組みを持つ
  • エージェント / ワークフロー / スクリプトの分担を決める

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