WBSをAIとともに管理するSkills(すぅ AI駆動PM)

すぅ AI駆動PM が2026-05-23にnoteで公開した記事。WBS(Work Breakdown Structure)の「作る・更新する・反映する」全工程からPMの単純作業を剥がすことを目的として設計した3つのClaude Code Skillsを紹介する。Skillsファイル(wbs-skills.zip)も配布している。

なぜExcelに戻したのか

WBS管理ツールとして最終的にExcel/Googleスプレッドシートに行き着いた理由は2つ。

  1. 関係者が多いとツールの習熟差が問題になる — 高機能ツールを導入しても更新されないWBSはお飾りになる
  2. AIに操作させるとき、ツールが変わると運用が大変になる — Excelはほぼどの現場でも通用し「とりあえずExcelで配ればOK」の安心感がある

理想はJIRA/Backlogに統一できれば良いとしつつも、現実的な選択としてExcelを選択している。

なぜスキル化したのか

手動更新が破綻するシナリオ:

  • 複数の変更がまとめて発生したとき
  • 依存関係(「T-005を2日延ばしたら後続のT-008・T-012も動く」)の追跡
  • プロジェクト途中のスコープ追加・優先度変更・メンバー増減

→ 更新コストが重すぎてWBSが誰にも触られなくなる現象が発生しやすい。AIが依存関係・波及まで面倒を見る仕組みが必要と考えてスキル化を決断。

3つのスキルの全体像

プロジェクトの時間軸で役割が分かれている:

フェーズスキル名役割
立ち上げ①wbs-hearingヒアリングして情報を整える
立ち上げ②wbs-generatorWBSをExcelで生成する
運用wbs-edit編集と本番反映を1スキルで完結

「立ち上げ期にwbs-hearing→wbs-generatorと流し、運用期はすべてwbs-editに集約」という設計。以前は運用期スキルが3つに分かれていたものを1つに統合している。

wbs-hearing(ヒアリングして情報を整える)

「WBSを作りたいけど何から考えればいいかわからない」状態で使うスキル。

特徴:

  • AIが全部選択式の質問で、プロジェクトの目的・スコープ・体制・スケジュール・リスクを順番に聞き出す
  • 全12フェーズ。最初に「誰の何を解決するプロジェクトなのか」を必ず固める
  • 無理なスケジュールには「これは厳しい」と率直に指摘する
  • 若手メンバーの工数はベテランの1.5〜2倍で見積もり、レビュー工数・手戻りを自動で組み込む

設計ポイント: 選択式(「次のうちどれですか?」)にすることで、自由記述の「空欄を前にして固まる時間」を排除し判断を速める。

出力: 整理済みのヒアリング結果(.md)→ そのままwbs-generatorの入力になる

wbs-generator(WBSをExcelで生成する)

ヒアリング結果か既存の要件定義書を渡すと、現場で使えるWBSのExcelファイルを出力するスキル。

実務的な仕掛け(最初から組み込み済み):

  • タスクID自動採番(T-001, T-002…)→ 「T-005を5/20までに」と自然言語で指示できる
  • 期日超過は赤ハイライト → 遅延が一目でわかる
  • 完了・取り下げタスクは自動グレーアウト → 生きているタスクだけが目立つ
  • タスクID重複セルは濃い赤で警告 → 手入力ミスを即検知
  • 「課題管理表」シートを同梱 → 軽量な課題・宿題を別シートで管理

互換性: Excel・Excel for the web・Googleスプレッドシートの3環境すべてで動作。「先方はGoogle派でした」という状況にも対応できる。

wbs-edit(編集と本番反映を1スキルで完結)

3つの中で最も強力で事故防止に効くスキル。SharePointやGoogleスプレッドシートで共同編集しているWBSを自然言語1行で編集する。

対応できる指示例:

  • 「T-005の期限を5/27まで延ばして」
  • 「○○のタスクを取り下げて」
  • 「来週やる検証タスクを3つ追加して、担当は田中さん」
  • 「議事録のアクションを会議タスクに入れて」
  • 「Slackで頼まれた確認事項を課題管理表に」

3シートの自動振り分け

ユーザーは「どのシートに書くか」を意識しなくてよい。AIが自動で振り分ける:

振り分け先振り分け基準
WBSシート(計画タスク)タスクID指定・フェーズ指定・5営業日以上の成果物
会議タスクシート(短期アクション)議事録の「Aさんが○○までに××する」形式
課題管理表シート(確認・調査)「○○を確認」「△△を調べる」などの軽量な宿題

事故防止の5つの仕組み

仕組み1: 古いファイル編集の防止 更新するたびに必ず最新版を取りに行ってから編集を開始する。「2週間前にダウンロードしたファイルをうっかり編集して顧客側の更新を全部上書き」という典型事故を構造的に排除。

仕組み2: 変更セルの黄色マーキング AIが触ったセルだけ自動で黄色にマーキング。レビュアーは黄色いセルだけ見ればよく、確認コストが激減する。

仕組み3: 期限変更の波及を先に提示

ユーザー: 「T-005の期限を5/27まで延ばして」

AI: 以下の波及が予想されます。
    ・T-008「設計レビュー」: 開始 5/21 → 5/28 (7日後ろ倒し)
    ・T-012「実装着手」  : 開始 5/25 → 5/28 (3日後ろ倒し)
    ・T-015「単体テスト」: 開始 6/11 → 6/14 (連鎖波及)

    1) 波及分も一緒に変更(推奨)
    2) T-005 だけ変更(整合性は崩れるが許容)
    3) 中止

依存関係の追跡を人力で行うと抜け漏れが必ず発生する問題をAIが解決する。

仕組み4: 削除ではなく「取り下げ」運用 タスクを消す際も行は削除しない。ステータスを「取り下げ」に変えてグレーアウト。「あのタスクってなぜなくなったの?」が後から追えるため振り返りに役立つ。

仕組み5: 3シート分まとめて本番反映 以前は追記した内容が本番(SharePoint/Googleスプレッドシート)に反映されない仕様があり、「ローカルのxlsxにだけ課題が溜まっていて本番側には何もない」事故が発生。新wbs-editでは3シート分の差分をまとめてセル単位で本番に反映。会議タスクシートが本番にまだなければ自動で新規作成してヘッダ装飾まで設定する。

まとめ:PMが本来やるべきことへの集中

WBSスキル群の狙いは「作る・更新する・反映する」全工程からPMの単純作業を剥がすこと。

PMの本来の仕事:

  • このタスクは本当に必要か
  • 期限を変えたら誰が困るか
  • リスクは何か

判断することであって、Excelのセルに値を打ち込むことではない

フェーズWBSスキル群がやること
立ち上げ選択式ヒアリングで考えるべき論点が漏れない
生成警告色・採番・3環境互換が仕込まれたWBSが即出力
運用自然言語1行でAIが3シートのどれかに自動振り分けて追記・編集
反映波及範囲を先に提示してから3シート分の差分を安全に共有ファイルへ反映

関連エンティティ・リソース