投資型医療
「消費型医療」(病気になったら治療する)から**「予防・早期介入・行動変容支援」に先行投資する**ことで、将来の医療費増大そのものを抑制しようとするパラダイム。武内和久・山本雄士が提唱。
背景:なぜ投資型医療が必要か
- 2015年度の国民医療費は 42.3兆円(国家予算の44%)
- 超高齢化が進み、2050年には現役世代1.37人が高齢者1人を支える構造になる
- 保険料は2009年以降20%以上値上げされており、このままでは保険料率が26%程度まで上昇する試算
- 医療費の87%は国民自身の税金・保険料で賄われているが、その認識が薄い
詳細は 超高齢化社会と医療費 を参照。
消費型医療の問題点
治療しているが管理できていない
多くの慢性疾患で「治療を受けているが効果が出ていない」患者が多数存在する。
- 糖尿病:患者450万人のうち血糖コントロールできているのは110万人(1/4)のみ
- 高血圧:「半分の半分の半分の法則」——家庭でも外来でも血圧良好なのは全患者の 1/8
- 骨粗鬆症:治療を受けているのは患者全体の10〜20%のみ。1,000万人が放置状態
未受診・放置問題
「要治療」通知を受けても放置している人が 全体の4割 にのぼる。健診結果の意味が理解できず、相談できる場所もないことが主因。
機会費用の見落とし
直接の医療費・介護費だけでなく、機会費用(歩行能力喪失による生活の質低下、家族の就労断念など)も大きいが、医療費統計には現れない。
投資型医療の要素
- 予防・健康維持への先行投資 — 現役時代から健康をケアし、リタイア後の医療費増大を防ぐ
- 早期発見・早期介入 — 重症化する前の段階で介入し、治療コストを下げる
- 行動変容支援 — 個人の生活習慣に合ったプログラム設計と多職種チームによるサポート
- 医療技術の活用 — 進化した医療技術を使えば「はるかに安く・簡単に」病気を治す・防ぐことができる
医療の5プレイヤー
| プレイヤー | 役割 |
|---|---|
| 受益者 | 患者・将来の患者(誰しも例外なく該当) |
| 支払者(保険者) | 健保・国保など(日本は約3,000の保険者) |
| 提供者 | 医師・医療専門職・医療機関 |
| 開発者 | 医療機器・薬の研究開発者 |
| 政府 | ルール設定・調整(政治家・中央省庁・自治体) |
健康経営との関連
投資型医療は企業の健康経営概念と強く重なる。現役時代の健康管理(会社の健康管理部門の機能強化・糖尿病専門病院との連携)が、将来の高齢者医療費抑制に直結する。
ソース
- 投資型医療 医療費で国がつぶれる前に(武内和久・山本雄士)