賃上げと実質賃金のギャップ
日本において2023〜2026年に顕在化した「名目賃金(賃上げ率)が上昇しているにもかかわらず実質賃金がマイナスになる」という構造的な問題。HR・人事担当者が賃金政策を考える際の基本的な文脈。
問題の構造
名目賃金(前年比) > 0 ← 春闘・賃上げの成果
物価上昇率(CPI) > 名目賃金上昇率
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実質賃金(前年比) < 0 ← 生活水準の実態は低下
2025年春闘では大手平均**5.39%**の賃上げ率を達成(過去2番目の高水準)しながらも、食料品・エネルギー中心の物価上昇がそれを上回る時期が続いた。
実質賃金を押し下げる主要因
1. 消費者物価指数(CPI)の上昇
- 輸入物価(エネルギー・食料品)の高騰が国内CPIを押し上げ
- 円安による輸入コスト増加が波及
2. パートタイム比率の上昇効果
- 労働市場でのパートタイム労働者の増加が平均賃金を押し下げ
- 毎月勤労統計の「一般労働者」と「パートタイム」で別途データを確認することが重要
3. 標本交代効果(統計的要因)
- 毎月勤労統計の調査対象事業所が一定の頻度で入れ替わる
- 補正指標として厚生労働省が「共通事業所による前年同月比」を参考資料として公表
HR実務への含意
| 観点 | 課題 | 対策例 |
|---|---|---|
| 採用・リテンション | 「5%賃上げ」を打ち出しても候補者の購買力は実質的に変わらない可能性 | 実質購買力への訴求・福利厚生の物価連動を検討 |
| 賃金設計 | 春闘ベースアップだけでは実質賃金改善が見えにくい | 生活関連手当・物価連動型調整の検討 |
| 従業員エンゲージメント | 賃上げをしても「生活が苦しい」という不満が続く可能性 | 実質購買力視点のエンゲージメントサーベイ設計 |
毎月勤労統計との関係
厚生労働省「毎月勤労統計調査」では以下の形で要因分解を確認できる:
- 参考資料「賃金の前年比・前年同月比の要因分解」: 名目賃金上昇率をパートタイム比率・労働者数変動・給与水準変動の各要因に分解して公表
- 時系列第6表「各国公表による主要国の実質賃金」: 日本と主要先進国の比較を可能にする
→ 詳細は 毎月勤労統計調査2026年3月分結果速報(厚生労働省) 参照