脂質代謝(脂肪酸・ケトン体)
体内での脂肪の消化・吸収・貯蔵・分解・燃焼のメカニズム全体。糖質制限ダイエットの科学的基盤。
脂肪の消化と吸収
- 食事中の脂肪 → 膵臓のリパーゼが腸で分解 → 脂肪酸 + グリセロール
- 小腸の細胞から吸収 → 再合成 + タンパク質結合 → カイロミクロン(大型複合体)形成
- カイロミクロンが筋肉に到達 → 酸化・エネルギー化
- カイロミクロンが脂肪細胞に到達 → 中性脂肪として貯蔵
体脂肪の合成(LPL 経路)
カイロミクロン
↓ LPL(リポタンパクリパーゼ)が分解
脂肪酸 + グリセロール → アシルCoA
+
グリセロール3リン酸(解糖系産物)
↓
中性脂肪(体脂肪)合成
重要なポイント:
- インスリンは LPL を活性化 → 糖質過多はアシルCoA + グリセロール3リン酸の供給を増やし体脂肪合成を促進
- ブドウ糖が多い状態 → 解糖系活性化 → グリセロール3リン酸大量生成 → 脂肪合成加速
体脂肪の分解(HSL 経路)
体脂肪(中性脂肪)
↓ HSL(ホルモン感受性リパーゼ)
脂肪酸(血中へ放出) + グリセロール
↓
エネルギーとして燃焼 → 体脂肪減少
HSL を活性化するホルモン:
- アドレナリン・ノルアドレナリン(運動時に分泌)
- 成長ホルモン
- 甲状腺ホルモン
- グルカゴン(血糖低下時に分泌)
HSL を抑制するホルモン:
- インスリン(炭水化物過多で分泌 → 脂肪分解を阻害)
グルカゴンの役割
血糖値が下がると分泌されるホルモン:
- 肝臓のグリコーゲンを分解して血糖を上昇
- 糖新生を促進
- HSL を活性化 → 脂肪酸を血中に放出してエネルギー産生
インスリンとグルカゴンは体脂肪の合成・分解のスイッチとして対立的に機能する。
脂肪の分類
| 分類 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 飽和脂肪酸 | パルミチン酸・ステアリン酸 | 常温で固体、動物性脂肪に多い |
| 一価不飽和脂肪酸 | オレイン酸(オリーブオイル70%以上) | 酸化安定性高い |
| 多価不飽和脂肪酸(ω-3) | EPA・DHA | 健康効果、魚油に多い |
| 多価不飽和脂肪酸(ω-6) | アラキドン酸 | 悪玉エイコサノイド生成の素材 |
| 中鎖脂肪酸(MCT) | カプリル酸・カプリン酸 | 長鎖より4倍速く酸化、ケトン体10倍生成 |
ケトン体生成
糖質が極度に制限されると、肝臓が脂肪酸からケトン体(アセト酢酸・βヒドロキシ酪酸・アセトン)を生成する。ケトン体は脳・心臓・筋肉のエネルギー源として機能する(ケトーシス状態)。
MCT は長鎖脂肪酸と比べてケトン体生成量が10倍多い。
体脂肪のカロリー
- 純粋な脂肪:9 kcal/g
- 体脂肪:水分等を含むため 7.2 kcal/g(ダイエット計算では体脂肪換算を使う)
関連概念
参照ソース
- 脂肪酸とケトン体 ~糖質制限ダイエットの科学 — 山本義徳(山本義徳 業績集 4)