脂肪酸とケトン体 ~糖質制限ダイエットの科学
山本義徳 著。「山本義徳 業績集 4」の一冊。Kindle ASIN: B01N58DHQV。61ハイライト。
糖質制限ダイエットの科学的根拠を解説した書籍。脂肪酸の分類・代謝・体脂肪の合成と分解のメカニズム、ケトジェニックダイエットの実践方法、EPA/DHA・MCT・CLA などの特定脂肪酸の効果を体系的に網羅する。
主要トピック
脂肪酸の分類と基礎知識
- 飽和脂肪酸 vs 不飽和脂肪酸:脂肪を構成する3分子の脂肪酸がすべて飽和か否かで分類
- 脂肪 vs 脂質:脂肪酸+グリセロール=脂肪。リン酸や糖質・タンパク質が結合したものも含めて「脂質」と総称
- 体脂肪のカロリー:純粋な脂肪は9 kcal/g だが、体脂肪は水分を含むため7.2 kcal/g
脂肪の4つの役割
- 細胞膜などの構成物質の材料
- エネルギー源
- ホルモン(副腎皮質ホルモン・男性ホルモン・女性ホルモン)の材料 → コレステロール低下でホルモンレベル低下
- エイコサノイドの材料(代謝コントロール)
- 脂溶性ビタミンの吸収助力
推奨:総摂取カロリーの3割を脂肪から摂取するとホルモンレベルが適正化される。
体脂肪の合成メカニズム(LPL)
- 食事中の脂肪 → リパーゼで脂肪酸+グリセロールに分解
- 小腸で吸収 → カイロミクロン(脂肪酸+グリセロール+タンパク質の複合体)形成
- 毛細血管壁の LPL(リポタンパクリパーゼ) がカイロミクロンの中性脂肪を分解 → 遊離脂肪酸
- ブドウ糖が多いと「解糖系」が活性化 → グリセロール3リン酸 + アシルCoA → 中性脂肪(体脂肪)合成
- インスリンは LPL を活性化 → 体脂肪合成を促進
体脂肪の分解メカニズム(HSL)
- HSL(ホルモン感受性リパーゼ):脂肪細胞内の中性脂肪を脂肪酸+グリセロールに分解し血中に放出
- HSL を活性化するホルモン:アドレナリン・ノルアドレナリン・成長ホルモン・甲状腺ホルモン・グルカゴン
- インスリンは HSL を抑制 → 炭水化物過多はダイエットの妨げ
- グルカゴン:血糖低下時に分泌 → グリコーゲン分解・糖新生促進・HSL 活性化
EPA / DHA の効果
- EPA はタンパク分解を防ぎタンパク合成を高める
- 推奨摂取量:EPA+DHA として1日 2,000〜2,500 mg
- 週1回まとめて15,000 mg摂取の可能性も研究中(人間での研究待ち)
- **アラキドン酸(AA)**は悪玉エイコサノイドを生成するが、トレーニング効果を高める側面もある。EPA を同時摂取してカウンター
- 卵1個に86 mg、豚レバー100 gに300 mg のアラキドン酸が含まれる
オリーブオイル
- 健康効果の主因は オレイン酸(含有量70%以上)
- 小さな遮光瓶を選ぶ(酸化防止)。小豆島産がおすすめ
MCT(中鎖脂肪酸)
- 長鎖脂肪酸(パルミチン酸)より 4倍速く酸化、ケトン体生成量は 10倍
- DIT(食事誘発性熱産生)も長鎖脂肪酸より優位に高い
- 胃腸が弱い場合は一回5 g程度に小分け。少量のレシチンに溶かして乳化も可
- 国内製品:「マクトンオイル」で検索(仙台勝山館の製品も推奨)
CLA(共役リノール酸)
- LPL 活性を抑制 → 体脂肪合成減少
- HSL 活性を向上 → 体脂肪分解促進
- CPT 活性を向上 → 脂肪燃焼スムーズ化
- PPAR-γ を介した抗糖尿病・抗動脈硬化・抗炎症作用
- ただし実際に運動して ATP を消費しないと体脂肪は燃えない
ケトジェニックダイエットの実践
マクロ比率(ケトジェニック):
- 脂肪 60%
- タンパク質 30%
- 糖質 10%(カロリー比)
糖質の摂取タイミング:
- 夕食に集中して糖質を摂ると、分散摂取より減量幅が大きく、善玉コレステロール上昇・悪玉低下・炎症指標(CRP・TNF-α・IL-6)低下の研究あり
- 夕食炭水化物 → レプチン増加 → 食欲抑制効果
タンパク質摂取量:
- トレーニングしている人:体重1 kg あたり 2.2〜2.3 g(ケトジェニックの場合はそのまま)
- 緩い糖質制限の場合は糖新生活発化のため少し増量推奨
- トレーニングなし:体重1 kg あたり 1.2 g
脂肪の摂取:
- オリーブオイル・青魚(EPA+DHA)・ナッツ類を優先
- アーモンド43 g/日 × 4週間で空腹感抑制・体重増加なしの研究あり
- ケトジェニック時は MCT を追加
ケトーシス移行サプリメントプロトコル
ローカーボ切り替え時1〜2日間の推奨サプリ:
| サプリ | 摂取量 |
|---|---|
| αリポ酸 | 食後300 mg × 3回 = 900 mg/日 |
| アルギニン | 食後3 g × 3回 = 9 g/日 |
| ケルセチン | 食後500 mg × 3回 = 1,500 mg/日 |
| EPA | EPA+DHA として2,000 mg以上/日(青魚食べる場合は不要) |
| バナバ茶 | 毎食時に飲む |
| シナモン | 小匙1杯 × 2回/日 |
| BCAA(ロイシン含む) | 5 g × 4回 = 20 g/日 |
カフェインとケトーシス:体重1 kg あたり 2.5〜5 mg のカフェインでケトン体・遊離脂肪酸レベルを高水準維持できる報告あり。コーヒー + MCT オイル + カフェイン錠剤でケトーシス誘導が容易になる。
運動パフォーマンスへの影響
- 低糖質・高脂肪食 → 持久力は改善(5研究のレビューで確認)
- ただし 最大パワーは低下
- ケトジェニック後にカーボローディングを行っても、解糖系酵素活性が低下しているため効果が出ない
関連概念
関連エンティティ
- 山本義徳 — 著者。元ボディビルダー・スポーツ栄養学の権威