クローズド・ループとオープン・ループ(失敗学)
マシュー・サイド が『失敗の科学』で提示した組織の学習能力を評価する二分法フレームワーク。
定義
| 状態 | 意味 |
|---|---|
| クローズド・ループ | 失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたり曲解されたりして、進歩につながらない現象・状態 |
| オープン・ループ | 失敗が適切に対処され、学習の機会や進化がもたらされる状態 |
クローズド・ループが生まれる原因
- エゴ防衛 — 失敗を認めると自分の評価が下がると感じる
- 権威勾配 — 階層構造が下からの報告を抑制する
- 講釈の誤り(後知恵バイアス) — 失敗後に「分かっていた」と解釈し直す
- 罰を恐れる文化 — 報告するとペナルティがある
オープン・ループを実現する要件
- ノーブレームカルチャー — 「私に問題があるかもしれないから、直してほしい」と言える心理的安全性
- 報告システムの設計 — 失敗情報を収集・分析・フィードバックする仕組み
- PACE(航空安全プロトコル) — 階層的組織での安全なコミュニケーション手順
- 累積淘汰(累積的選択) — 小さな失敗から学ぶ継続的改善サイクル
産業別事例
航空業界(オープン・ループの代表例)
- ブラックボックス(フライトレコーダー)による事故データの完全記録・公開分析
- パイロットが匿名で安全上の懸念を報告できる制度
- 事故調査が「責任追及」でなく「原因究明」を目的とする文化
医療業界(クローズド・ループの典型)
- 医療ミスの隠蔽・訴訟回避優先
- 権威ある医師への批判が抑制される階層文化
- 本書のコンテキストでは航空業界と対比して論じられている
関連概念
- 心理的安全性 — オープン・ループの前提条件
- 組織開発 — 組織全体でのオープン・ループ文化の醸成
- PACE(航空安全プロトコル) — 航空業界でのコミュニケーション改善手法
- 講釈の誤り(後知恵バイアス) — クローズド・ループを強化する認知バイアス
- 累積淘汰(累積的選択) — オープン・ループが実現する進歩のメカニズム
出典
- マシュー・サイド-失敗の科学 location 247