クローズド・ループとオープン・ループ(失敗学)

マシュー・サイド が『失敗の科学』で提示した組織の学習能力を評価する二分法フレームワーク。

定義

状態意味
クローズド・ループ失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたり曲解されたりして、進歩につながらない現象・状態
オープン・ループ失敗が適切に対処され、学習の機会や進化がもたらされる状態

クローズド・ループが生まれる原因

  1. エゴ防衛 — 失敗を認めると自分の評価が下がると感じる
  2. 権威勾配 — 階層構造が下からの報告を抑制する
  3. 講釈の誤り(後知恵バイアス) — 失敗後に「分かっていた」と解釈し直す
  4. 罰を恐れる文化 — 報告するとペナルティがある

オープン・ループを実現する要件

  • ノーブレームカルチャー — 「私に問題があるかもしれないから、直してほしい」と言える心理的安全性
  • 報告システムの設計 — 失敗情報を収集・分析・フィードバックする仕組み
  • PACE(航空安全プロトコル) — 階層的組織での安全なコミュニケーション手順
  • 累積淘汰(累積的選択) — 小さな失敗から学ぶ継続的改善サイクル

産業別事例

航空業界(オープン・ループの代表例)

  • ブラックボックス(フライトレコーダー)による事故データの完全記録・公開分析
  • パイロットが匿名で安全上の懸念を報告できる制度
  • 事故調査が「責任追及」でなく「原因究明」を目的とする文化

医療業界(クローズド・ループの典型)

  • 医療ミスの隠蔽・訴訟回避優先
  • 権威ある医師への批判が抑制される階層文化
  • 本書のコンテキストでは航空業界と対比して論じられている

関連概念

出典