社会保険実務
社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)は、法人事業所および常時5人以上の個人事業所に強制適用される。労務担当者は資格得喪の手続きを期限内に行い、標準報酬月額を正確に管理する責任を負う。
対象保険の概要
| 保険 | 根拠法 | 保険者 | 対象年齢 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 健康保険法 | 協会けんぽ or 健康保険組合 | 75歳未満 |
| 厚生年金保険 | 厚生年金保険法 | 日本年金機構 | 70歳未満 |
| 介護保険(第2号) | 介護保険法 | 健康保険と同窓口 | 40歳〜64歳 |
主要手続き一覧
| 手続き | 期限 | 届出先 | 様式 |
|---|---|---|---|
| 資格取得届 | 入社から5日以内 | 年金事務所 or 健保組合 | 健保・厚年被保険者資格取得届 |
| 資格喪失届 | 退社翌日から5日以内 | 同上 | 健保・厚年被保険者資格喪失届 |
| 被扶養者(異動)届 | 事実発生から5日以内 | 同上 | 健康保険被扶養者(異動)届 |
| 算定基礎届(定時決定) | 7月1日〜7月10日 | 同上 | 健保・厚年被保険者報酬月額算定基礎届 |
| 月額変更届(随時改定) | 固定的賃金変動後3か月経過後速やかに | 同上 | 健保・厚年被保険者報酬月額変更届 |
| 賞与支払届 | 賞与支払後5日以内 | 同上 | 健保・厚年被保険者賞与支払届 |
| 育児休業中の保険料免除申出 | 育休開始時 | 同上 | 育児休業等取得者申出書 |
| 産前産後休業中の保険料免除申出 | 産休開始時 | 同上 | 産前産後休業取得者申出書 |
標準報酬月額
標準報酬月額は社会保険料の計算基礎となる額で、等級制(協会けんぽ:1〜50等級)。
決定方法
| 種類 | 時期 | 対象月 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 定時決定(算定基礎届) | 毎年7月 | 4・5・6月の報酬平均 | 翌9月〜翌年8月の標準報酬月額を決定 |
| 随時改定(月額変更届) | 固定的賃金が変動した月 | 変動後3か月の平均 | 2等級以上変動した場合に改定 |
| 資格取得時決定 | 入社時 | 入社月の報酬見込み | 初回の標準報酬月額を決定 |
| 育休終了後改定 | 育休終了翌月 | 復職後3か月の報酬 | 申出により最短で改定可能 |
随時改定(月変)の要件
以下の3つをすべて満たす場合に月額変更届を提出する:
- 固定的賃金(基本給・手当)に変動があった
- 変動月から3か月間(賃金支払基礎日数17日以上の月)の報酬平均を算出
- 現在の標準報酬月額と比較して2等級以上の差が生じた
保険料率(2025年度目安)
| 保険 | 事業主負担 | 被保険者負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 協会けんぽ(東京) | 4.985% | 4.985% | 9.97%(2025年) |
| 厚生年金 | 9.15% | 9.15% | 18.3%(固定) |
| 介護保険(東京・40〜64歳) | 0.9% | 0.9% | 1.8%(2025年) |
※ 都道府県によって健保・介護保険料率は異なる。毎年3〜4月に改定される。
主な給付一覧
| 給付名 | 保険 | 概要 | 手続き |
|---|---|---|---|
| 傷病手当金 | 健康保険 | 業務外の病気・けがで連続3日休業後、4日目〜最長1年6か月支給(標準報酬日額の2/3) | 申請書に医師記載が必要 |
| 出産手当金 | 健康保険 | 産前42日・産後56日、標準報酬日額の2/3支給 | 産後に申請 |
| 出産育児一時金 | 健康保険 | 1児につき50万円(産科医療補償制度加入機関) | 直接支払制度で医療機関へ |
| 高額療養費 | 健康保険 | 医療費自己負担が限度額を超えた分を払戻し | 申請または限度額適用認定証で窓口精算 |
| 老齢厚生年金 | 厚生年金 | 60歳(特別支給)〜65歳から受給 | 本人が年金事務所へ請求 |
| 障害厚生年金 | 厚生年金 | 初診日に厚生年金加入中の傷病による障害 | 本人申請 |
| 遺族厚生年金 | 厚生年金 | 厚生年金被保険者死亡時の遺族への支給 | 遺族が申請 |
健康保険証・マイナ保険証
2024年12月2日以降、従来の健康保険証は新規発行停止。マイナンバーカードを健康保険証として利用(マイナ保険証)する制度へ移行。
- マイナ保険証未取得者への資格確認書の発行が事業主の義務
- 被保険者へのマイナ保険証利用登録の案内が推奨
よくある実務ポイント
- 資格取得届の遅延は行政指導・遡及処理の原因となる。入社当日に準備を整える
- 4・5・6月の残業が多いと標準報酬月額が高くなり、翌9月以降の保険料が上がる
- 月変は「2等級以上」の変動が要件。1等級変動のみでは月変不要
- 育休中の免除申出を忘れると毎月保険料が徴収され、後から還付手続きが煩雑になる
- 扶養認定:年間収入130万円未満・同居の場合は収入が被保険者の1/2未満