WACC(加重平均資本コスト)
概要
**WACC(Weighted Average Cost of Capital、加重平均資本コスト)**は、企業の資金調達コスト。企業が投資家(株主+債権者)からいくらで資金を調達してきているかを表す数字。
投資判断における**ハードルレート(最低要求収益率)**として機能する。
計算の考え方
企業は2つの方法で資金を調達する:
- 株式(エクイティ): 株主から集める資金 → 株主資本コスト(CAPM(資本資産価格モデル)で算出)
- 負債(デット): 金融機関からの借入 → 負債コスト(税効果を考慮)
WACCはこの2つを時価ベースの比率で加重平均した値。
WACC = (株主資本 / 総資本) × 株主資本コスト
+ (負債 / 総資本) × 負債コスト × (1 - 実効税率)
負債コストに税効果を掛ける理由
支払利息は損金算入(税務上の費用)できるため、実質的な負債コストは税引き後で計算する。
計算例(石野雄一の例)
前提条件:
- 発行済株式数: 20万株
- 株価: 2,500円
- 株式時価総額: 20万株 × 2,500円 = 5億円
- 借入金: 1億5,000万円(金利5%)
- 実効税率: 40%
- 株主要求収益率: 20%
計算:
- 総資本 = 5億円 + 1.5億円 = 6.5億円
- 株式比率 = 5 / 6.5 ≒ 76.9%
- 負債比率 = 1.5 / 6.5 ≒ 23.1%
- WACC = 76.9% × 20% + 23.1% × 5% × (1 - 40%)
- WACC ≒ 16.08%
この場合「会社は投資家から16.08%で資金を調達している」ことを意味する。
投資判断への活用
WACCはIRR(内部収益率)と比較して投資の採否を決定する:
| 比較 | 判断 |
|---|---|
| IRR > WACC | 投資実行(調達コスト以上のリターンが期待できる) |
| IRR < WACC | 投資見送り(調達コストを下回るリターンしか期待できない) |
10%で調達してきたお金を、5.71%の預金口座で運用するなんてバカげた話はありえない——石野 雄一
関連概念
- CAPM(資本資産価格モデル) — 株主資本コストの算出に使用
- IRR(内部収益率) — WACCと比較して投資判断を行う
- NPV(正味現在価値) — WACCを割引率として使用
- 会計とファイナンスの違い — ファイナンス視点の基礎
- 現在価値・将来価値(時間価値) — WACCによる割引の基礎概念
関連ソース
- ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~(石野 雄一)